2008年3月19日水曜日

聴覚障害不正 十数人が年金「辞退」 受給者は140人

聴覚障害の身体障害者手帳問題に絡み、札幌の耳鼻咽喉(いんこう)科医(73)の診断書を基に障害年金を受給していた十数人が二月下旬以降、社会保険庁道社会保険事務局(札幌)に対し、受給資格がなくなったという「非該当届」を自ら提出していたことが、十七日分かった。十数人の年間の年金受給額は少なくとも一千万円規模とみられる。また、問題の医師が関与した障害年金受給者が全道で約百四十人に上ることも判明。過去の年金受給総額は数億円とみられ、同事務局が確認を急いでいる。
 障害年金の受給は重度障害を持つ年金加入者が対象。身障者手帳の申請とは別に、初診から一年半ほど通院後に医師の診断書を得て、社会保険庁に申請し、診査を受ける。障害年金一級の要件は両耳の聴力レベルが一〇〇デシベル以上で、最重度の聴覚障害二級の身障者手帳取得要件と同じ。年金申請の際、身障者手帳を取得していれば参考にコピーを添付するが、手帳取得が即、障害年金受給資格にはならない。
 複数の関係者によると、非該当届を出したのは空知管内在住の障害年金受給者ら。二月下旬から本格化した道の再調査などで、二級ばかりか最軽度の六級の要件も満たさないとして手帳を返還した者が大半とみられる。届け出理由を「手帳を返還し、年金の受給資格がなくなったから」などと説明し、既に受給停止措置が取られたという。
 一人当たりの年間の年金受給額は、国民年金ベースの障害基礎年金一級で九十九万百円、同二級で七十九万二千百円。また、厚生年金ベースの障害厚生年金は、障害基礎年金に加えて厚生年金加入期間の報酬分の上乗せなどがあり、百数十万-二百数十万円になる。
 人数や金額などから、非該当届の提出者が受け取っていた年金額は、年間一千万円規模とみられる。
 一方、問題の医師が関与した障害年金受給者数は、道社会保険事務局に書類が残っている二〇〇二年度以降の申請者で約百四十人。基礎年金が全体の人数の八割、厚生年金が二割という。
 同事務局はこれらに給付された年数や給付額などを精査中だが、関係者は「この医師が絡んだ障害年金の受給総額は数億円に上る」と言う。
 障害年金は国民年金法と厚生年金保険法で規定。不正に年金を受給した人に対し、社会保険庁長官が相当額を返還させることができ(時効は五年)、国民年金では三年以下の懲役または百万円以下の罰金の規定もある。

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